秋も深まり、紅葉が色づき始めた京都で開催されたコタ優秀サロン会の講演は、カレーハウスCOCO壱番屋の創業者特別顧問の宗次徳二さんでした。全国チェーンの創業者、数値やシステム重視の話をする方と想像していたのですが、冗談まじりで淡々と話しを進める飄々とした姿は、私にはマギー司郎さんにしか見えませんでした。しかし、孤児院から引取られた養父のギャンブル三昧で、余儀なくさせられた幼少期の極貧生活は、質素倹約の精神を作り、その壮絶な人生で培われた精神力で早起きの実践をし、それによって出来た時間を全て仕事に充て辿り着いた成功。「経営者なら、よそ見をせず経営に身を捧げなさい。」「夢ではなく、目標を持ちなさい。」と仕事一筋の自らの信念を説きます。物腰の柔らかさと相反する内容の凄みに、器の大きさが感じられました。不動産業から喫茶店、そしてカレー専門店へと転身した現場で学んだサービス業の原点、「町の食堂の魅力は、夫婦二人が目の前のお客様への感謝の気持ちで仕事をして、その感謝の気持ちがお客様に伝わり成り立つのです。」その言葉は、クーポン券などの価格競争ではなく、味の点検、店頭の掃除、笑顔の接客の徹底、つまりコツコツの実践が何より大事であり、“安売りのサービスよりも、真心のサービス”、本当の感謝の気持ちがお客様のリピートをもたらすと教えられました。
翌日、昼食を食べに燕三条店に行き、確かにトッピングや増量で、料金は1000円以上になり、マニュアル的でしたが気持ちの良い挨拶と接客を体験しました。昼時過ぎの閑散した帰りの駐車場では、店長自ら新人に掃除の注意点を指導しながら、笑顔で見送ってくれました。12年前に、53歳の若さで後継社長に道を譲った創業者の理念は、しっかりと引き継がれている事を実感した光景でした。